浮腫(むくみ)

浮腫(むくみ)

浮腫edemaはギリシア語のoidema(ふくらんだ状態を意味する)を語源とすることばで、体液の過剰による組織の腫脹(はれ)を意味していると考えられます。

体液は細胞内液と細胞外液(組織間液、血管内液など)に分けられ、生体の調節機構により、これら相互間で交換が行われて組成は一定に保たれています。浮腫は、この調節機構に障害が生じ、組織間液が過剰に増加した状態です。

原因疾患の治療が先決

浮腫は全身性浮腫と局所性浮腫に大別できます。全身性浮腫は、心臓、腎臓、肝臓、内分泌疾患などでみられ、局所性浮腫は、静脈疾患、リンパ管疾患などでみられます。浮腫患者の診断とは、浮腫の原因疾患を究明することです。中には原因不明の浮腫もありますが、光線治療にあたっては原因疾患の治療を念頭におかなければなりません。

全身性浮腫の症状

全身性浮腫の原因と症状

①心性浮腫

うっ血性心不全によって発生します。重力の影響を受け、身体下部に生じるのが特徴です。立位では足、下肢に、坐位では腰、仙骨部、陰部、足首、大腿部後面に生じます。圧痕性(押すと跡がつく)でネフローゼ症候群の浮腫より硬く、呼吸困難、咳嗽、静脈怒張(静脈の拡張)などをともないます。重症の場合胸水、腹水も現れます。

②腎性浮腫

ネフローゼ症候群、急性腎炎、急性腎不全などが原因の浮腫で、顔面特に眼瞼(まぶた)に多く現れます。蒼白でやわらかく、著しい圧痕を生じる場合は、ネフローゼ症候群を原因にすることが多いようです。

③肝性浮腫

肝硬変によることが多く、浮腫に先行して腹水がしばしばみられます。主な原因は、肝臓のアルブミン(たんぱく質)合成の低下にともなう低アルブミン血症、門脈(内臓からの血液を集めて肝臓に運ぶ静脈)圧亢進、ホルモンの増加などです。心不全でも腹水が見られますが、この場合は浮腫が先行しがちです。腹壁の静脈怒張、くも状血管腫(くもが足を広げたような赤い斑点)、手掌紅斑、肝機能障害などがみられます。肝臓は腫大する場合、または縮小する場合があります。

④内分泌性浮腫

甲状腺機能が低下する粘液水腫によって現れることがあります。この浮腫は圧痕を生じないことがあり、甲状腺腫特有の顔貌、寒さに弱いなどの症状がみられます。

原因不明の浮腫と症状

女性によくみられる原因不明の全身性浮腫には、周期性浮腫と更年期浮腫などがあります。

①周期性浮腫

月経前浮腫ともいいます。月経1〜2週間前に現れ、月経開始とともに消失します。浮腫とともに精神的不安定、頭痛、乳房痛など、いわゆる月経前緊張症の症状がみられます。

②更年期浮腫

閉経期の女性に、軽いが頑固な浮腫が現れることがあります。浮腫のほかに更年期症状がみられます。しかし、この時期を過ぎると消失します。

③特発性浮腫

20〜40歳代の女性、特に中年の神経質な肥満傾向にある女性に多くみられる浮腫です。基礎疾患がないにもかかわらず、肉体的・精神的疲労時に不規則に出現し、程度も定まりません。この浮腫は、立っていると増強し、横になり安静にすると軽減または消失するなど体位の影響を受けます。夕方には朝に比べて1.4kg以上(重症では4〜5kg)の体重増加がみられます。

全身性浮腫の光線治療

浮腫の治療の原則は、原因となる病気を治療することです。まず、日頃の注意としては、安静にすることがあげられます。安静は、心臓への負担を軽くし、腎臓および肝臓への血液の流れを増やします。食事療法は、塩分、水分の制限が中心になります。

光線治療上、浮腫をとる利尿効果を促す最良の方法は、両足裏部に十分に光線照射することです。種々の病気によって、心臓より最も遠距離にある足の先は血液の流れが弱くなっています。両足裏部への光線照射は、この弱くなった血液の流れを改善し、ひいては心臓も強化し、浮腫を軽減します。

●心性浮腫の治療

心性浮腫の治療は心身の安静、塩分、水分の制限によって心臓の負担を軽減します。

♢治療用カーボン:3000ー5000番、または5002ー5002番、3000ー6002番を用います。

♢光線照射部位:両足裏部⑦、両足首部①、両膝部②(以上集光器使用せず)、後頭部③(1号集光器使用)、または左右咽喉部④(2号集光器使用)、呼吸困難、咳嗽などが強いときは、⑦①②に数十分間から数時間照射します。症状の強いときは下肢に照射するのが有効です。必要により腹部⑤、腰部⑥(以上集光器使用せず)、左肩胛骨下部(1号集光器用)、左乳下部(2号集光器使用)の光線照射を考慮します。

♢光線照射時間:各5〜10分間。

●人生浮腫の治療

ネフローゼ症候群では尿に大量のたんぱくが出るために、血管の中のたんぱくが低下して浮腫を生じます。安静を保ち、塩分制限をして、高たんぱく、高カロリー食を摂ります。浮腫が強いときは、食塩2〜3g/日とし、水分を制限します。急性腎炎、慢性腎不全では腎機能障害による塩分、水分の貯溜が浮腫の原因です。急性腎炎の場合は横になり安静にして、保温および食事療法を行います、安静は腎臓への血液の流れを増やし、腎臓の負担を軽減、浮腫消失にと最も有効です。慢性腎不全で高血圧をともなう場合は、心性浮腫も加わります。塩分制限と低たんぱく食の食事療法を行います。腎機能低下が進行すると透析療法が必要になります。

♢治療用カーボン:3002ー5000番、5000−6006番を用います。

♢光線照射部位:両足裏部⑦、両足首部①、両膝部②(以上集光器使用せず)、後頭部③(1号集光器使用)、または左右咽喉部④(2号集光器使用)。

腎性浮腫は心性浮腫も加わっているので、光線治療は、心性の場合と同様に下肢⑦①②に症状が軽減するまで照射します。急性腎炎で、扁桃炎が同時に見られる場合は、その治療(治療用カーボン3000ー5000番、または3001ー4008番、3001ー3003番でもよい)も行います。症状の軽減後、しばらく患部照射を行います。腹部⑤(集光器使用せず)あるいは左右下腹部(各1号集光器使用)腰部⑥(集光器使用せず)、左右腎臓部(各2号集光器使用)を治療します。

♢光線照射時間:各5〜10分間。

●肝性浮腫の治療

肝硬変の浮腫の腹水に対しては安静に加え、原則として高たんぱく・高カロリー食で、塩分や水分制限の食事療法を行います。

♢治療用カーボン:1000ー3001番、または1000ー5000番、1000ー6007番を用います。

♢光線照射部位:両足裏部⑦、両足首部①、両膝部②(以上集光器使用せず)、後頭部③(1号集光器使用)、必要により肝臓部(2号集光器使用)、あるいは背正中部(1号集光器使用)の光線照射を行います、経過とともに腹部⑤、腰部⑥(以上集光器使用せず)を追加照射します。

♢光線照射時間:各5〜10分間。

●内分泌性浮腫の治療

粘液水腫(甲状腺機能低下症)の浮腫は、甲状腺ホルモンの不足によって生じます。疲労感が強いので、過労、ストレスを避けます。

♢治療用カーボン:3001ー5000番、または3007ー5000番を用います。

♢光線照射部位:両足裏部⑦、両足首部①、両膝部②(以上集光器使用せず)、左右咽喉部④(2号集光器使用)。症状により患部の追加照射を行います。腹部⑤(集光器使用せず)、あるいは左右下腹部(以上1号集光器使用)、腰部⑥(集光器使用せず)。

♢光線照射時間:各5〜10分間。

●周期性および更年期浮腫の治療

周期性および更年期浮腫は、どちらもホルモンのアンバランスから生じます。自律神経系の失調も加わりますので日常生活にも注意し、浮腫の強いときは無理のない塩分制限を行います。

♢治療用カーボン:3001ー5000番、または3001ー4008番を用います。症状の軽い場合は3000ー5000番を用います。

♢光線照射部位:両足裏部⑦、両足首部①、両膝部②、腹部⑤(以上集光器使用せず)あるいは左右下腹部(1号集光器使用)、腰部⑥(集光器使用せず)、左右咽喉部④(2号集光器使用)。症状により後頭部③(1号集光器使用)を追加照射します。

♢光線照射時間:各5〜10分間。

●特発性浮腫の治療

特発性浮腫の原因は定かではありませんが、女性に多くみられることから、ホルモンの不均衡などが原因として考えられます。患者は精神的に不安定ですから、浮腫は進行性ではなく危険な状態ではないことを理解させ、心とからだを安静にすることが大切です。浮腫は立っていると強くなるので、長時間の立ち仕事は避け、必要に応じて塩分制限を行います。肥満傾向にある場合は食事療法も行います。

♢治療用カーボン:3000ー5000番、または3001ー5000番、3001ー6002番を用います。

♢光線照射部位:前記「周期性および更年期浮腫」と同様。

♢光線照射時間:各5〜10分間。

局所性浮腫の症状と治療

局所性浮腫の原因と症状

①静脈性浮腫

深部静脈血栓にともなう急性のものと、慢性静脈血行不全によって発生するものがあります。特に、後者は日常よくみられ、女性の場合多くが下肢静脈瘤として現れます。下肢静脈瘤では、表在静脈(皮膚に近い静脈)に弁不全が起こっているので血液の逆流が起きて抹消に強いうっ血が生じます。うっ血の結果、毛細血管内圧、細胞間質圧が増加、リンパ循環も障害されて、細胞間質組織液の産生も増し、さらに再吸収も障害されて、まず間質に浮腫が起きます。浮腫はやがて固定化し、この状態が進行すると皮膚や皮下組織に硬結、肥大、繊維化を起こしてざらざらした感じになり、日常生活の極めて軽微な刺激(外力)でも傷になります。同時に血管壁が虚血になり血管の透過性が高まるため、毛細血管周囲組織に赤血球がもれ出し、皮膚と皮下組織にヘモジデリン(茶褐色に着色した顆粒)が沈着します。そしてまず皮膚炎の状態となり、わずかな外傷によっても潰瘍ができます。原因は、子宮ガン、大腸ガンなどの開腹手術後(特に広範囲な手術)、分娩後に発生することも多いのですが、原因不明のものも決して少なくありません。また、調理師、美・理容師など長時間の立ち仕事に従事する人にもみられます。初期症状は、下腿の浮腫で、通常夕方になって現れ、夜寝ると消失します。浮腫は主として下腿下部、特に踝の周囲によくみられ、放置しておくと皮膚炎、湿疹、潰瘍などの形成がみられるようになります。これらの合併症の発症は、うっ血による組織の栄養障害が起こって初めてみられるものです。患者は50〜60歳代の女性に多い傾向があります。

②リンパ性浮腫

リンパ管の閉塞、遮断によって、リンパ液の吸収、循環が十分に行われてないために、皮下、筋膜にいたる組織間に異常な液体貯溜が起こって生じます。リンパ性浮腫が進行する病態は次のように考えられます。リンパの流れの障害は、リンパ液中のたんぱく再吸収につながり、そのためにたんぱく濃度は正常の5〜7倍にも達するといわれています。このような高たんぱく濃度は膠質浸透圧をさらに上昇させ、浮腫を助長、結合織の増殖が促進されます。加えて細菌感染が繊維化を増長させます。このような一連の病態が反復して、悪循環を繰り返し、進行性のものとなり、最終的には象皮病となります。原因となる病気としては、リンパ系の炎症、悪性腫瘍の浸潤、手術(子宮ガン、乳ガンなど)による広範囲なリンパ節切除、フィラリア症などがあげられます。症状は、手または足全体のびまん性(広範囲にあちこちできる)浮腫として発症し、初期には手または足をマッサージしたり、高く上げると軽減または消失します。慢性化すると皮膚が肥厚して硬くなります。さらに進行すると象皮病という状態になります。

③炎症性浮腫

種々の炎症を起こす疾患にともなって、むくみを生じます。炎症が起こると炎症物質(ヒスタミン、セロトニンなど)が現れ、血管壁の形態変化とともに血管透過性亢進が起こり、血中たんぱくの漏れ出しがみられ局所性浮腫が現れます。原因として炎症(火傷、打撲、捻挫、骨折、ねぶと、癰、慢性関節リウマチなど)、アレルギー反応(じんましん、接触性皮膚炎、アトピー性皮膚炎など)などがあげられますが、これらのほかにも数多くの疾患があります。症状は、炎症なので発赤、疼痛、熱感、腫脹(浮腫)などをともない、ほかに原因疾患の症状がみられます。

局所性浮腫の光線治療

局所性浮腫の光線治療は、全身性浮腫の場合と同じように下肢に対し十分に光線照射を行うことです。また、浮腫は局所性なので、患部にも十分に光線照射を行うことが効果的です。日頃の注意も大切で、特に静脈性、リンパ性浮腫では、症状が強いときは安静を十分にとることや食事療法に注意する必要があります。

●静脈性浮腫(下肢静脈瘤にとる場合)の光線治療

病態生理から明らかなように、静脈圧上昇を中心とした一連の悪循環を断つことが治療になります。症状が軽いときは、適度の運動、軽いマッサージなどを行って血行の改善を促すのも効果的です。ただし、長時間の歩行や立ったままの姿勢はうっ血を悪化させますので避けることが大切です。

♢治療用カーボン:3000ー5000番、または5002ー5002番を用います。疼痛がある場合や皮膚炎・皮膚潰瘍がある場合は、治療用カーボン3001ー3002番、3002ー5000番、4005ー6002番が効果的です。

♢光線照射部位:両足裏部⑦、両足首部①、両膝部②、腹部⑤、腰部⑥(以上集光器使用せず)、静脈瘤の状態により腓腹筋部または後大腿部(以上集光器使用せず)を追加します。骨盤内手術を受けている場合は、腹部の代わりに左右下腹部を照射(1号集光器使用)します。

♢光線照射時間:各5〜10分間。

●リンパ節浮腫(乳ガン、子宮ガンの根治手術による広範なリンパ節切除による上肢あるいは下肢の浮腫について)の光線治療

光線治療は早期に行うほうがよく、皮下組織に増殖や肥厚が起こってからでは、あまり効果は期待できません。また安静や患肢の高挙(高くする)は初期にはかなり効果が期待できます。下肢の浮腫の広がりを阻止するためには弾性靴下の使用もしばしば効果をもたらします。

♢治療用カーボン:3000ー5000番または5002ー5002番を用います。慢性化して皮膚が肥厚し硬い場合は、治療用カーボン3002ー5002番、4005ー5002番が効果的です。

♢光線照射部位:両足裏部⑦、両足首部①、両膝部②、腹部⑤、腰部⑥(以上集光器使用せず)。

乳ガン術後の場合は、患側の腋窩部左または右に2号集光器を使用して照射します。症状により上腕、前腕に1号集光器を使用して照射します。子宮ガン術後の場合は、腹部⑤の代わりに左右下腹部を1号集光器を使用して照射します。

♢光線照射時間:各5〜10分間。

●炎症性浮腫の光線治療

炎症にともなう浮腫の原因は数多くあるので、各疾患の光線治療については使用する治療用カーボン番号、光線照射部位などを省略します。火傷、捻挫、打撲、骨折などの場合は、疼痛、浮腫などの炎症のある局所を集光器を使用して直接照射することが効果的です。症状が軽減するまで数十分間から数時間行います。なお、炎症性浮腫がある場合は、治癒を早めるために、入浴は控えめにします。

浮腫の分類

全身性浮腫

心性浮腫:うっ血性心不全

腎性浮腫:ネフローゼ症候群、腎不全、急性胃炎

肝性浮腫:肝硬変

内分泌性浮腫:粘液水腫、周期性浮腫

薬剤による浮腫:ホルモン製剤、鎮痛消炎剤

栄養失調性浮腫

特発性浮腫

局所性浮腫

リンパ性浮腫:リンパ系の炎症、腫瘍、寄生虫

静脈性浮腫:圧迫、血栓、静脈瘤

炎症性浮腫:ガン、感染、アレルギー

内分泌系浮腫:限局性粘液水腫

浮腫の出現しやすい部位と考えられる病気

局所的な浮腫は、静脈が浮き上がっているかどうかがポイントで、皮膚の色にも注意が必要です。

●顔のむくみ

・薬剤性(ホルモン製剤・ステロイド剤)

・月経

・急性糸球体腎炎

・ネフローゼ症候群

・小児喘息

●腹部のむくみ

・肝硬変

・慢性腹膜炎

・慢性収縮性心膜炎

・栄養失調

●背部のむくみ

・うっ血性心不全

・急性心膜炎

●下肢部のむくみ

・うっ血性心不全

・脚気

・妊娠

・下肢静脈瘤

・下肢静脈血栓症

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