漢方薬の処方③補陰剤

納気

肺が吸い込んだ気を腎におさめるはたらきです。腎が納気をすると、肺は新しい気を吸い込めます。腎が変調すると呼吸に問題がでます。

さまざまな臓腑の陰虚から生じる症状を改善

陰液が足りない陰虚では陽が強くなりすぎて、熱が生じてきます。また、陰虚とは陰の性質を持つ津液が不足してきた状態でもあります。補陰剤のベースとなる六味地黄丸(六味丸)は、腎が陰虚になって、熱をもつ場合に効果があります。名前のとおり、6種類の生薬で構成されています。腎の陰を補う生薬と、瀉(余分なものを取り去る)のはたらきがある生薬が含まれます。同時に補瀉をすることで陰陽のバランスがとれると考えられます。

六味地黄丸に五味子を加えたものが都気丸です。五味子は、肺が吸い込んだ気を腎におろす納気ができないと、肺に気がたまったままになり、呼吸に影響がでて、せきやぜんそくがでます。腎の陰虚が原因のぜんそくには都気丸を使います。

五味子とともに麦門冬を加えたのが麦味地黄丸です。腎の陰虚と肺の変調からおきているぜんそくを改善します。肺は乾燥にたいへん弱いので、乾いた空気を吸い込むと痛み、せきやぜんそくにつながります。麦門冬には肺を津液でうるおし、せきをとめる効果があります。

熱が強く、ほてるようになってきたときは、熱を下げなければなりません。そのときには知柏地黄丸を使います。六味地黄丸に、熱を取り去る効果が強い知母と黄柏を加えたものです。腎だけではなく、肝も陰虚になると、肝とかかわりが強い目に影響がでて、疲れ目、違和感、視力低下がおこります。そこで六味地黄丸に、目の症状を改善する菊花と枸杞子を加えて杞菊地黄丸とします。菊花は炎症を抑え、枸杞子には補益の効果があり、肝の陰液を補います。

六味地黄丸ベース以外の補陰剤

そのほかに、二至丸という肝と腎の陰虚によく使われるものがあります。女貞子と旱蓮草の2種類の生薬だけで処方されます。女貞子は陰を補うはたらきが強い生薬です。二至丸の処方はほかの漢方薬に含まれて使われていることが多いです。やはり有名な補陰剤に左帰飲と左帰丸があります。全身の陰液が不足して、臓腑にうるおいがなくなったときに使われます。陰虚と気虚が同時にあるときには、気陰双補剤が使われます。陰虚と気虚が悪化すると、脈が非常に弱くなってきて、心が変調したことがわかります。そのときは生脈散が使われます。また、不整脈はみられるときには、炙甘草湯が使われます。どちらも気と陰の両方を補います。

豆知識*甘草は日本ではただ乾燥させただけのものが使われるが、中国ではあぶった炙甘草が多く使われています。甘草は漢方処方の7割で使われているともいわれています。帰経は生薬がどの臓腑や経絡に薬効があるかを示す概念です。帰経が同じ生薬でも薬効が異なることがあります。帰経が肺の場合、黄  は肺の熱をさまし、乾姜は肺を温め、百合は虚を補います。

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