精の不足

腎精

腎にためられている精のことです。精が足りなくなった部分に、すみやかに送りだされます。精は飲食物から生成されて補給されます。

精が足りなくなる原因と引き起こされる病気

精は、気・血・津液とならんで、人のからだにとってたいへん重要なものです。人が生まれつきもっている精を先天の精、体内でつくられる精を後天の精といいます。精の不足でおこる病気を腎精不足といいます。精は脾で生成されて、腎に貯蔵されているので、腎精不足には脾と腎がかかわっています。

精は発育、生殖、老化と関係していると考えます。また、精が不足すると、精を貯蔵している腎の働きも弱くなります。腎は髪、歯、耳、足腰、脳と関連しているとされます。このため腎精が不足すると、子どもでは発育不全がみられることがあります。大人では性機能が影響を受けるので、不妊症につながることがあります。年をとって、毛が抜け、歯がぐらぐらし、聴力が衰えたり、膝や腰が弱ってうまく歩けないのは、精の不足と言われています。物忘れが増え、認知症にいたることもあります。

腎精不足は、腎の固摂機能を低下させます。精を閉じ込めておけなくなり、夢精や遺精がおきるといいます。二便(大便と尿)もとどめておけなくなり、大便や尿を漏らすようになります。妊娠している女性では、子宮をしっかり保持できなくなり流産しやすくなると言われます。

生まれつき先天の精が少ない子どもは、おねしょをしたり、小児ぜんそくをおこすことがあります。しかし、成長するにしたがって後天の精をたくさんつくれるようになれば、先天の精の不足を補えるので、症状は消えることが多いです。

食事をきちんととっていないと、精をつくる水穀の精微が足りなくなります。脾の働きが弱っても、精の生成不足になります。また、慢性的な病気、老化、性行為の不摂生でも精を大量に消耗し不足します。
なお、精にかかわる病気は、足りなくなる場合のみで、精が多すぎて病気になることはないとされています。

生殖能力をつかさどる天癸(てんき)

ある年齢になると、女性は7年周期、男性は8年周期で生理的な変化がおこると言われています。女性はおよそ7×2の14歳、男性は8×2の16歳になるころ、腎中の精気は天癸をつくるといいます。天癸は生殖機能の成熟をうながす物質です。

天癸の作用によって、女子には初経がおこり、男子は精液をつくるとされます。年をとると、腎中の精が衰えるために、性機能が減退していきます。女性ではおよそ7×7の49歳で閉経し、男性では8×7の56歳で生殖機能を失うといわれます。

精の不足でおこる症状

■先天の精の不足

生まれつきもっているはずの先天の精が不足している子どもでは、いくつかの症状がみられることがある。大きくなって自分で精がつくれるようになれば治っていきます。
発育不良・・・からだが小さかったり、二次性徴が遅れることがある。
夜尿症・・・おねしょが多くなることもある。
小児ぜんぞく・・・体力がなく、ぜんそくになることがある。

■腎精不足

腎にためられている精が足りなくなった状態です。精が不足した症状だけではなく、精の不足により腎の機能が衰えた症状がでます。
不妊症・・・腎精は生殖に深くかかわっているので、不足すると妊娠しにくくなるといわれる。
足腰のだるさ・・・精の不足で腎の働きが弱くなると、足腰がだるく、いつも疲れを感じる。
髪が抜ける・・・腎は髪と深くかかわっているので、腎が弱ると髪の毛が抜けやすくなる。
歯が抜ける・・・腎が弱ると歯が抜けやすくなる。
難聴・・・耳鳴りがしたり、耳が聞こえにくくなりがち。
健忘・・・物忘れが増え、認知症にいたることもある。

■腎気不固(固摂機能の低下)

腎精が不足すると、尿や精を閉じ込めておく働きが弱くなります。
失禁・・・尿が自然に漏れてしまう。そのほか、尿が漏れる夢精や便の失禁、流産などもみられることがある。

『黄帝内経素問』によると、女性は7歳で腎の精が活発になり、14歳で天癸が充満し月経が始まります。21歳、28歳で体格は頂点に達し、35歳から白髪が出て49歳で月経は停止します。
男性は8歳で腎の精が活発になり、16歳で天癸が充満、24歳、32歳で体格が頂点に達し、40歳で脱毛が始まり、56歳で精気は欠乏すると言われています。

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