鍼治療③鍼と漢方薬

異病同治

東洋医学では証にもとづいて治療法が決定されます。そのため違う病気でも、証が同じであれば、同じ治療法となります。

鍼治療も湯薬治療もめざすことは同じ

東洋医学の治療法は、大きく鍼灸療法と湯薬療法に分けられます。鍼灸はツボ(経穴)と経絡を通じて、変調した部位にからだの外側からはたらきかけます。一方、湯薬療法は漢方薬を服用して、変調した部位にからだの内部からはたらきかけます。2つの治療法は、中国で別々に発達しました。しかし、方法が違うだけで、めざす治療成果は同じです。

東洋医学では四診で得られた情報から弁証論治を行います。鍼灸と湯薬の違いは、理(病気の原因と状態を調べる)→法(治療の方針を決める)→方(実際の処方を決める)によって、穴(ツボ)→術(鍼灸)を選ぶか。薬を選ぶかの違いです。

脾胃気虚を治療する場合

証さえ決まれば、湯薬でも鍼灸でも、同じような治療成果を上げることができます。たとえば、疲れやすく、動くと息切れがするという症状をもつ胃下垂の人がいます。弁証の結果は、脾と胃の気が不足している、脾胃気虚という証でした。

鍼灸治療は、合谷と足三里のツボを使います。合谷は気の運行に強くかかわり、補法を施すと気が充実します。足三里は脾と胃のはたらきを強めます。脾は運化をつかさどるため、脾がよくはたらくようになれば自然に気が充実します。

湯薬での治療は、補中益気湯が使われます。補中益気湯は、体力がなく、疲れている人に処方される漢方薬です。胃腸のはたらきを助け、全身の体力を回復します。脾と胃が元気になれば、自然に気も充実してきます。同じ脾胃気虚であれば、癃閉(排尿が困難で下腹部が張って痛い)、下痢、低血圧症などの病気でも、合谷と足三里に鍼灸を施すか、補中益気湯を服用するか、どちらかの方法で治療が期待できます。これは、病名が違っても、症が同じであれば、同じツボ、同じ漢方薬によって治療する、異病同治といえます。

東洋医学は、2つの治療手段を臨機応変に使い分けることができるので、たいへん便利な医療です。たとえば、鍼が怖い、皮膚に症状があって鍼を刺しにくいような人には湯薬治療を行えばいいです。病気の症状によって薬を服用できないときは、鍼灸の治療効果が期待できます。また、災害時などで漢方薬が用意できない状況でも、鍼さえあれば治療することができます。実際に1976年に中国河北省で起きた唐山地震の現場では、天津医療隊が鍼治療を行っています。

ひとつの症状に対する漢方薬の治療とツボの治療の例

おもな症状や疾患名 食欲不振、軟便から水溶性の下痢、おりもの、腹部膨満感、胃腸炎、痰が多い、せき、足のむくみ、脂質異常など。
原因 脾のはたらきが弱く、脾虚となり、運化がうまくいかないため、津液が停滞し、湿や痰が生じている。
湯薬治療に使う漢方薬 参苓白朮散:脾のはたらきを高め、気や津液の運化を正常にすることで、津液の停滞を解消する。
鍼灸治療に使うツボ 陰陵泉:湿をとる効果が高い。瀉法により湿を取り去る。補法で脾を回復させ、運化を正常にすることで、湿が生成されないようにする。

足三里:瀉法により湿を取り去り、補法により脾胃を回復させる。

おもな症状や疾患名 イライラする、怒りっぽい、激しい頭痛、めまい、目の充血、耳鳴り、突発性難聴、高血圧、中耳炎、精巣炎、胆嚢炎、排尿困難、膣炎、帯下、陰部のかゆみなど。
原因 肝の気が停滞したために、熱がこもって実熱になっている。あるいは、肝経の湿熱が骨盤腔内にある膀胱や生殖器に悪く作用している。
湯薬治療に使う漢方薬  竜胆瀉肝湯:肝の熱をさまし、排尿を促し、湿熱を排泄する。肝の気の停滞を解消する。自律神経を安定させる。炎症によるむくみを抑える。
鍼灸治療に使うツボ 太衝:肝経の気のめぐりをよくして、肝の気の停滞を解消する。

行間;肝にある湿を取り去り、熱をさます。

兵墟:肝と強くかかわる肝経にそって、目、耳、からだの横、側頭部に作用して症状をやわらげる。

陰陵泉:湿を取り去る効果が高い。湿がとれると熱もさめる。

おもな症状や疾患名 疲れやすい、不眠、動機、不安感、慢性のせきや息切れ、呼吸困難、健忘、めまい、慢性疲労症候群、手足の冷えなど。
原因 からだ全体の気と血が足りなくなり全身に症状がでている。心が弱って動機がしたり、心にやどる神が安定しないので精神的症状がでる。肺が弱ってせきや息切れがする。
湯薬治療に使う漢方薬 人参養栄湯:全身の機能を高めることで、気と血の生成を助け、気血両虚の症状を解消する。血の循環をよくしてからだを温め、栄養分を行きわたらせる。精神を落ち着かせる。せきをしずめ、痰を出す。
鍼灸治療に使うツボ 神門:心の気と血を補い、神を安定させることで、精神状態や思考を安定させる。

合谷:気を補う効果がたいへん高い。気虚の症状全般を改善できる。

三陰交:血を調節する効果が高い。補法により血を補う。脾のはたらきを高めることで、気と血の生成を促す。

おもな症状や疾患名 下半身の冷え、膝や腰に力がない、腰痛、慢性疲労症候群、耳鳴り、ふらつき、むくみ、勃起不全、排尿障害、過眠、骨粗鬆症など。
原因 腎の陽気が不足した腎陽虚。腎のはたらきが悪くなるので、腎精が足りなくなり、全身が冷えて、弱ってくる。
湯薬治療に使う漢方薬 八味地黄丸:腎と膀胱のはたらきをよくする。排尿を整え、血液の循環をよくして下半身から温める。温めることで、弱った腎を回復させることもできる。
鍼灸治療に使うツボ 復溜:腎のはたらきをよくする。

関元:腎を温めて陽気を補う。冷えが強いときには灸をすえる。

腎兪:腎の気を補い、はたらきを助ける。

豆知識*肝(五行の木)が虚していれば、木の母にあたる水(腎)を通る経絡に補法します。それぞれの経脈の五兪穴で、母性と子性のツボが決まっているため、母性のツボを選びます。肺(五行の金)が実していれば、金の子にあたる水(腎)の経絡を使い、五兪穴のうち子性のツボに瀉法をします。

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