全身および局所の光線照射で、熱エネルギー補給による温熱作用と循環調節作用が常にからだを温かい状態にし、冷えて循環障害に陥った局所や粘膜の血流を改善します。さらに光エネルギーによる殺菌作用と自血球の遊走作用や異物食作用を活性化させて、全身および局所の免疫機能を強化して、炎症を鎮静化させます。可視総合光線療法により症状は改善し、さらに継続的な治療は再発予防につながります。
生体の免疫機能
生体の抵抗力である免疫機能は、微生物や正常な自分の成分以外の「非自己」と本来の自分の正常なからだの成分の「自己」を識別して「非自己」を排除する機能です。この機能によって生体は維持・調節されています。したがって、生体の生存に免疫現象は必要不可欠なものです。免疫を司る機能は、大きく細胞性免疫と液性免疫に分けられます。細胞性免疫は好中球、マクロファージ(大餐紬髄)、Tリンパ球、ナチュラルキラー(NK)細胞、LAK細胞、K細胞などの細胞で、その中心をなすのがTリンパ球です。これらの細胞は、外敵や異物を直接攻撃することから細胞性免疫と呼ばれています。一方、液性免疫を担う細胞はBリンパ球です。Bリンパ球は免疫グロブリンという抗体を産生し、この抗体が外敵や異物を攻撃します。Bリンパ球自体は直接外敵や異物を攻撃しないで、免疫グロブリンというたんぱく質を分泌することから液性免疫と呼ばれています。免疫の発動は、非自己であるウイルス、細胞、異物、ガン細胞などの外敵(抗原)を食べてしまうことから始まります。これを担当するのが大食細胞と呼ばれるマクロファージという細胞です。マクロファージは外敵や異物を食べて消化し、その情報をTリンパ球に伝えます。このような働きをするマクロファージは、抗原提示細胞とも呼ばれています。またマクロファージは、化学伝達物質であるインターロイキン1という物質を分泌してTリンパ球を活性化させます。マクロファージから情報を受けたTリンパ球はインターロイキン2を分泌して、休んでいる各種のTリンパ球群を増殖・活性化させます。活性化したTリンパ球の一種であるヘルパーTリンパ球はBリンパ球に外敵や異物の情報を伝え、Bリンパ球は外敵(抗原)に対する抗体(免疫グロブリン)をつくり分泌します。抗体は抗原と結合することによって抗原である外敵や異物を攻撃します。免疫反応を終わらせる働きはサプレッサーTリンパ球が担当し、Bリンパ球による抗体の産生を抑えたり、Tリンパ球の増殖を抑えたりして反応を治めます。このように生体は、Tリンパ球による細胞性免疫と液性免疫である抗体が協調して外敵や異物に反応し、個体の内部環境の恒常性(ホメオスターシス)を維持しようとしています。
ビタミンDと免疫機能
従来、ビタミンDの主な作用はカルシウム代謝を介して骨組織や生活習慣病(成人病:動脈硬化、高血圧、糖尿病)などに及ぼす影響が知られていました。しかし、近年ビタミンDの受容体がマクロファージやその前駆細胞、Tリンパ球、Bリンパ球などの免疫担当細胞にも存在することが明らかにされてきました。また、活性化されたマクロファージ自身がビタミンDを産生することも明らかにされ、ビタミンDの作用が単にカルシウム代謝の調節だけでなく、細胞の分化・増殖や免疫機能の調節という新たな作用にまで及んでいます。
[単球・マクロファージ系]
◎ビタミンDは単球からマクロファージヘの分化を促進します。
◎ビタミンDは免疫機能の重要な働きを担うマクロファージを活性化し、生理活性物質であるインターロイキン1の分泌を促して免疫反応を活発にします。また、ビタミンDはマクロファージが外敵や異物に対して付着、貪食する機能や、過酸化水素(H₂O₂)、一酸化窒素(NO)を分泌して殺菌する機能を高めます。
[リンパ球系]
◎Tリンパ球に対してビタミンDは、異常亢進状態にあるヘルパーTリンパ球に対して抑制(インターロイキン2の分泌抑制)を示します。これにともなってBリンパ球による抗体産生は低下します。一方、機能が低下した状態にあるヘルパーTリンパ球に対してはビタミンDは亢進(インターロイキン2の分泌促進)を示し、Bリンパ球の抗体産生は増加します。したがって、ビタミンDはTリンパ球の刺激状態により2面的な作用があります。低下した状態にあるサプレッサーTリンパ球に対してビタミンDはその作用を増強させる効果が示唆されています。ビタミンDの免疫機能に及ぼす基本的な作用は単球・マクロファージ系の機能を促進させるとともに、他方これによって活性化されるリンパ球系の反応を抑制して恒常性(ホメオスターシス)を保ち、免疫調節ホルモンとしての働きを持っています。しかし、ビタミンDは免疫機能が低下あるいは亢進している状態で、いずれにも有効に作用することから、ビタミンDは免疫担当細胞に対して、あるときは刺激的に、あるときは抑制的に、全体として調整的に、重要な役割を果たしていると考えられます。
アレルギー性疾患
この免疫の働きに狂いが生じて起こる病気のことをアレルギー性疾患といいます。アレルギー性疾患の主なものにアレルギー性鼻炎、気管支喘息、アトピー性皮膚炎などがあります。アレルギー性疾患が増加してきた原因は、まだよくわかっていませんが、食生活の変化、環境、特に大気の汚染、精神的なストレスなどが関係しているといわれています。このように、アレルギー性疾患は文明と関係があり文明病ともいわれており、21世紀にはますます増加すると考えられています。
感染症とアレルギー性疾患
カルシウム不足やビタミンD不足は細胞内カルシウム濃度を上昇させ、免疫担当細胞の機能を障害することになります。その結果、感染症やアレルギー性疾患にかかりやすくなります。各々の細胞の機能が十分に発揮されるためには細胞内外におけるカルシウムの濃度に差がなければなりません。この濃度差は通常1万倍で、細胞内のカルシウム濃度は細胞外に比べ1万分の1しかなく、細胞内では非常に少ない状態です。このような状況でカルシウムが細胞に流入すると、細胞に信号が生じて各細胞はその機能を発揮することができることになります。自血球やリンパ球など免疫を担当する細胞についてもカルシウムの濃度差は重要で、カルシウム・ビタミンD不足が続いていると細胞内カルシウム濃度が上昇して内外の濃度差が小さくなり、免疫担当細胞の機能は低下します。高齢者では感染症が死因の第4位(85歳以上では第3位)で、加齢にともなう免疫機能の低下がかかわっています。可視総合光線療法を続けていると「風邪をひかなくなった」とよくいわれますが、これは光線照射が免疫能を高めてウイルスや細菌の感染を予防した結果です。近年、アレルギー性鼻炎(花粉症)やアトピー性皮膚炎などアレルギー性疾患が増加しています。この増加には種々の要因が関連していると考えられますが、過敏性の免疫異常が大きな要因となっています。可視総合光線療法はアレルギー性鼻炎では肥満細胞から分泌されるヒスタミンなど起炎因子の放出を抑制したり、サプレッサーTリンパ球の機能を亢進させる作用などにより過敏症を改善すると考えられます。アトピー性皮膚炎に対して可視総合光線療法は、表皮内のラングルハンス細胞(マクロファージと同種類)を減少させて抗原提示機能を低下させたり、肥満細胞の数を減らしたり、ヘルパーTリンパ球数の減少やサプレッサーTリンパ球の機能を亢進、免疫グロブリンのIgEの減少、接触過敏反応に抑制的に働く血中インターロイキン1の上昇などによって細胞性免疫を抑制して症状を改善させると考えられます。
骨粗霧症と免疫
高齢者で骨粗鬆症の変化が著しいものほど、細胞性免疫機能の指標であるツベルクリン反応の陰性者が多いことが指摘されています。これは細胞性免疫の低下が骨量の減少、脊椎圧迫骨折、骨粗鬆症の進行と平行することを示しています。骨粗鬆症患者では血中のヘルパーTリンパ球対サプレッサーTリンパ球の比が高く、ビタミンDの投与によリサプレッサーTリンパ球が増加して、この比は正常になることが示されています。このことから、骨粗鬆症の状態があると免疫異常もともなってみられます。骨粗鬆症の原因は従来からいわれているビタミンDやカルシウム欠乏などのほかに、ビタミンD欠乏による免疫異常も関与していることになります。免疫異常はサイトカインを介して骨の吸収や形成にも大きな影響を与えることを示しています。ここに骨粗鬆症と免疫系の関連が明らかにされてきました。したがって、骨粗鬆症に対する可視総合光線療法は、ただ単にビタミンD産生によるカルシウム代謝異常の改善だけでなく、ビタミンDによる免疫異常の改善にも大きく寄与していると考えられます。
自己免疫病
免疫系は非自己である外敵や異物から生体を防御する機構ですが、時には生体自身である自己と非自己である外敵や異物の識別機能が障害され自己抗体をつくることがあります。これにより自分の組織や臓器に対して免疫反応を起こし、自分で自分の臓器を障害させてしまう現象を自己免疫と呼び、これに関連した病変からなる疾患群を自己免疫病と総称しています。特定の臓器に起こる自己免疫病には甲状腺機能亢進症(バセドウ病)、橋本病、ある種の糖尿病、多発性硬化症、潰瘍性大腸炎などがあります。全身的に起こる自己免疫病には慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、強皮症、多発性筋炎などがあります。可視総合光線療法はバセドウ病、慢性関節リウマチなど多くの自己免疫病に成果がみられています。これは可視総合光線療法の免疫を調節する作用によって自己免疫異常を是正するからです。今なお原因不明とされる疾患には免疫異常が関与している可能性が高いことから、可視総合光線療法の応用範囲はさらに高まってくると思われます。(注)自己免疫病の中には全身性エリテマトーデスのように日光過敏症をともなうものがあります。日光過敏症や医師から日光を避けるように指示されている人は光線療法は行わないようにします。
免疫機能とネオプテリン
北里大学教養総合センターの津末玄夫教授は、可視総合光線療法が免疫機能、特に細胞性免疫を高めることを示唆する研究報告をしています。教授は日頃から光線治療器を愛用しています。専門はネオプテリンの研究ですが、自身の病気を機会に、可視総合光線療法は免疫機能を高めているという感触を得ました。報告書では、術前術後の光線治療の経過並びにご母堂の治療経過などから、可視総合光線療法の治療効果や意義、さらに可視総合光線療法を含め医療の将来性について触れています。津末教授の研究は、免疫機能とネオプテリンという物質の関係に関する報告です。ネオプテリンは、細胞性免疫の一つである単球やマクロファージが、Tリンパ球から分泌されるインターフェロンによって活性化されたときに分泌される物質です。したがって、ネオプテリンの値が高いということは、なんらかの刺激によってTリンパ球が活性化されていること、つまり細胞性免疫が活性化されていることを意味しています。このような関連から、ネオプテリンは細胞性免疫反応の指標として利用され、悪性腫瘍、ウイルス感染症、関節リウマチ、結核、エイズなどで高値を示すことが報告されています。津末教授の報告では、悪性腫瘍に対する免疫反応によって、ネオプテリンの値は、一般的な腫瘍マーカーが上昇する以前から高値を示していました。これは、マクロファージ、Tリンパ球など細胞性免疫が刺激されていることを示唆しています。この状況下で光線治療を行うことによってネオプテリン値はさらに上昇しました。これは、光線治療によって細胞性免疫が刺激されたことを間接的に示唆していると考えられます。この報告は、可視総合光線療法の免疫調節作用について、その一部を解明する貴重なデータとなると思われます。光線療法と免疫の関係は十分に解明されていませんが、徐々に、免疫機能に及ぼすビタミンDの作用が解明されてきています。日光浴や光線療法と密接に関係しているビタミンDは、単球からマクロファージヘの分化を促進し、マクロファージから分泌されるインターロイキン1の分泌を促進することが示され、マクロファージが抗原提示細胞としてより効率的に機能するように作用しています。さらに、ビタミンDは、単球による結核菌の増殖阻害作用を促進させることが認められ、結核への感染予防と悪化防止にビタミンDが有効であることが示されています。また、ビタミンDは、異常亢進状態にあるヘルパーTリンパ球に対しては抑制、低下した状態にあるヘルパーTリンパ球に対しては亢進させる働きがあり、サプレッサーTリンパ球に対しては、その作用を増強させる効果があることが示唆されています。
ガンの予防
生体の免疫反応が腫瘍の発生、進展に関与していますが、このシステムを免疫監視機構と呼んでいます。ガンに対する免疫が存在すると思われる理由として、先天的あるいは後天的に免疫不全があったり、免疫抑制剤を投与されていたり、免疫能が低下している高齢者や免疫能が未発達な小児では、がんの発生が高率に認められているためです。ガンの一次予防としてアメリカのガーランド博士の研究がよく知られています。日照の関係で光線を浴びる機会が少ない地域では大腸ガンや乳ガンの発生が高いという研究結果で、ビタミンD欠乏やカルシウム不足によってガンに罹患する可能性が増すことを明らかにしました。この結果は、ビタミンDやカルシウムには、細胞のガン化を修復する働きや免疫監視機構を高める作用があることを示唆しています。
可視総合光線療法と免疫機能
光線療法は多くの疾患の治験例から、高齢者やガン治療後など免疫機能が低下している状態では、その機能を高め、アレルギー性疾患や自己免疫疾患など免疫機能が異常に充進している状態ではその機能を抑えることが症状の改善から明らかです。このような作用を有するものはBiological Response Modifier(免疫修飾物質)と呼ばれ、可視総合光線療法と密接な関係にあるビタミンDは免疫修飾物質の仲間ともいわれています。可視総合光線療法は光化学作用と深部温熱作用という自然な作用によってからだ全体を調整して免疫機能を修復し、正常化する作用が認められており、このことが予防医学並びに治療医学において有効な働きをしています。今後、可視総合光線療法のこのような作用はビタミンDなどの免疫機能に及ぼす作用の解明とともに、しだいに明らかになってくると思われます。
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