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東洋医学について

3 健康と病理

東洋医学における「正気」と「邪気」の動的平衡:健康と病理を司る根本原理

東洋医学の診断と治療の根底をなす思想は、「正気」と「邪気」という二つの対立する概念の相互作用に集約されます。この枠組みは、単に病気を引き起こす原因を特定するだけでなく、人間が本来持つ生命力や自然治癒力の本質を深く考察するものです。現代医学が病原体や病理学的変化を外部からアプローチするのに対し、東洋医学はこの内部と外部の動的な関係性を通じて、生命現象全体を捉えます。

1. 正気:生命の維持と防衛を担う総合的エネルギー

正気とは、人体に内在する生命活動の総称であり、病気に抗い、健康を維持する総合的な防衛力、すなわち自然治癒力を指します。これは単一の力ではなく、複数の要素から構成される複合的な概念です。

  • 五臓六腑の機能的連携: 正気は、五臓(肝・心・脾・肺・腎)と六腑(胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦)の協調的な働きによって生み出され、全身に巡ります。特に、脾と胃は飲食物から「水穀の精微」を生成し、これを肺の「宗気」と合わせることで「気」の循環を促します。また、腎は「先天の精」を蔵し、生命の根源的な力を供給します。これらの臓腑の健全な機能が、強固な正気の基盤となります。
  • 気・血・津液: 正気を構成する三つの重要な要素として、気(生命活動の原動力)血(体を滋養し潤す物質)津液(体液全般)が挙げられます。これらの物質が体内を円滑に運行し、相互にバランスを保つことで、生理機能の恒常性が維持されます。例えば、気が不足する「気虚」、血が不足する「血虚」といった状態は、正気の弱まりを示唆する代表的な病理状態です。
  • 心身一如の原則: 東洋医学では、心と体は不可分な一体として捉えられます。精神状態(七情:喜・怒・憂・思・悲・恐・驚)の過度な変動は、正気の流れを阻害し、臓腑の機能失調を引き起こすと考えられています。心の平穏を保つことが、正気を高める上で不可欠な要素です。

2. 邪気:健康を脅かす内外の病因

邪気とは、人体に疾病を引き起こすあらゆる病理的因子を指します。邪気は、発生源によって大きく以下の三つに分類されます。

  • 外邪(六淫): 自然界の異常な気候変動を指し、風(ふう)寒(かん)暑(しょ)湿(しつ)燥(そう)、火(か)の六つを総称して「六淫(りくいん)」と呼びます。例えば、風邪は、風の邪気が経絡を通じて体表から侵入し、頭痛や悪寒、発熱といった症状を引き起こすと解釈されます。
  • 内邪(七情): 人間の精神活動である七情が、過度に強まったり長期化したりすることで、体内の気血の運行に悪影響を及ぼし、病理的な変化を引き起こします。例えば、過度な怒りは肝の気を上逆させ、顔面紅潮や高血圧などを引き起こすと考えられます。
  • 不内外邪: 外邪と内邪のいずれにも属さない病因です。これには、不適切な食事(飲食の不節)、過労や運動不足、外傷などが含まれます。例えば、脂っこい食事の摂り過ぎは、脾胃の機能を損ない、「湿熱」という病理的な邪気を生み出す原因となります。

3. 正気と邪気の攻防:疾病の発症と治癒のメカニズム

東洋医学では、健康な状態とは、正気が邪気に優位に立ち、体内の恒常性が保たれている状態を指します。しかし、邪気が強力であったり、何らかの理由で正気が弱まったりすると、邪気が人体に侵入し、両者の間で「正邪相争」(せいじゃそうそう)という闘争が始まります。この闘争の結果が、疾病の発症やその予後を決定します。

  • 発病の過程: 正気が十分であれば、外から侵入した邪気を速やかに排除できるため、病気は発症しないか、あるいは軽症で済みます。しかし、正気が虚弱な状態では、邪気の侵入を許し、その結果、疾病が顕在化します。
  • 治癒の過程: 治療の目的は、単に症状を抑えることではなく、正気を回復させ、邪気を排除する正邪の闘争を援助することにあります。東洋医学の治療原則「扶正祛邪(ふせいきょじゃ)」は、この思想に基づいています。

4. 東洋医学の治療原則:扶正祛邪

扶正祛邪は、東洋医学的治療の核心を成す原則であり、その実践は、患者の病理状態によって「扶正為主」(正気を補うことを主とする)祛邪為主」(邪気を除くことを主とする)、あるいは「扶正祛邪兼顧」(正気と邪気の双方に配慮する)に分類されます。

  • 扶正: 正気を補強する治療です。虚弱体質や慢性病の患者に対して、漢方薬や鍼灸を用いて、気・血・津液の不足を補い、臓腑の機能を高めます。
  • 祛邪: 邪気を体外に排出する治療です。急性病や邪気が優位な病態に対して、発汗、利尿、瀉下(下剤)などの方法で邪気の排除を試みます。

現代医療が病気の原因(例:細菌、ウイルス)を直接的に排除するアプローチを主とするのに対し、東洋医学は患者自身の生命力(正気)を高めることで、自ら病に打ち勝つ力を引き出すことを重視します。この思想は、予防医学や慢性疾患の管理において、現代医療の限界を補完する新たな可能性を提示しています。

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