1. 六腑の概論と機能的特性
東洋医学において、六腑は、胆(たん)、胃(い)、小腸(しょうちょう)、大腸(だいちょう)、膀胱(ぼうこう)、三焦(さんしょう)を指します。
六腑の機能的な特性は、「伝導の官(かん)」と呼ばれ、飲食物を受け入れ、消化し、栄養分を吸収し、不要なものを排泄するという、主に飲食物の経路と排泄を担う管状の器官系統として捉えられます 。口から肛門、尿道に至るこの経路に変調が生じると、消化・吸収・排泄に関連する様々な症状が現れます 。
2. 消化吸収系の三腑(胆、胃、小腸)の変調
2.1. 胆(たん)の変調:消化と精神活動
胆は、胆汁を排泄し、消化を助ける機能を持つほか、精神・意識活動にも深く関わります。
- 胆汁の異常排泄: 胆が変調すると、胆汁の異常な排泄がおこります 。
- 胆汁が胆から外にあふれ出ると、黄疸(おうだん)が発生します 。
- 胆汁が上方に上がってくると、口の中が苦く感じられます 。
- 決断力と勇気への影響: 胆は、決断と勇気に関係しているとされます 。
- 胆が弱ると、決断力がなくなり、物事をなかなか決められない 。
- 常にびくびく、おどおどするといった情緒不安定な状態になることもあります 。
2.2. 胃の変調:受納と腐熟
胃は、飲食物を最初に受け入れ、ざっと消化し(腐熟)、小腸へ送り出す役割を担います 。
- 機能低下(胃気の上逆): 胃が変調し、飲食物を小腸に送る機能が不調になると、胃の「気」が口に上がってきます(上逆) 。これにより、食欲不振や消化不良 、腹部の膨満感、むかつき、吐き気、げっぷ、酸っぱいげっぷ、胸焼け、口臭などが生じます 。
- 胃熱(過熱状態): 胃が熱をもつと、消化が速くなり、すぐに胃の中が空になりやすいとされます 。
- 過食: 食欲が旺盛になり、食べてもすぐに空腹になる過食状態がおこります 。
- 便秘: 胃の熱は体内の津液(しんえき:体液)を消耗すると考えられ 、便の水分がなくなり、便秘となります 。
2.3. 小腸の変調:清濁の分別
小腸は、胃から送られたものを栄養分(清)と不要物(濁)に分ける清濁分別の機能を担っています 。
- 分別機能の失調: 小腸が変調し、この分別がうまくいかなくなると、栄養分と不要物が混じり、腹鳴り、腹痛、下痢などがおこります 。
- 特に、消化がきちんとできないと、未消化物を伴う下痢をするようになります 。
- 小腸熱: 小腸が熱をもつと、水液代謝にも影響を与え、尿が赤くなったり、濁ったり、排尿時にひりひりとした熱さを感じる排尿痛がおこることもあります 。
3. 排泄・水液代謝系の三腑(大腸、膀胱、三焦)の変調
3.1. 大腸の変調:糟粕の伝導
大腸は、小腸から送られてきたものからさらに水分を吸収し、大便として肛門に送る役割を果たします 。
- 便秘: 大腸が変調し、機能が失調すると、便秘または下痢がおこります 。
- 大腸が熱をもつ、津液が不足する、または大腸自体の動きが悪い場合、便秘になります 。
- 下痢: 大腸が冷えると、ひどい下痢がおこります 。
- その他の症状: しぶり腹、血便、大便失禁、脱肛などの症状も現れることがあります 。
3.2. 膀胱の変調:貯尿と排泄
膀胱は、腎から送られてきた不必要な水分を尿として貯め、排泄する器官です 。排泄のタイミングは腎が決定しています 。
- 腎との連携失調: 膀胱が変調すると、腎との連携が失われ、貯尿と排尿のコントロールができなくなると考えられます 。
- 排尿障害:
- 尿の出が悪い(なかなか尿が出ない) 。
- 排尿回数や尿量の増加 。
- 失禁(尿を漏らす) 。
- 尿の濁りなどの症状があらわれます 。
3.3. 三焦の変調:水液の通路
三焦は、具体的な腑ではなく、臓腑のすきまの気や水分の通路を指し、腹部を上下に貫く概念です 。上から上焦(じょうしょう)、中焦(ちゅうしょう)、下焦(げしょう)に分けられます 。
- 水液代謝の不調: 三焦は水分の通り道であり 、変調すると水の代謝がうまくいかなくなるとされます 。
- 局所的な水分の停滞: 上焦、中焦、下焦のどこかが変調すると、その場所に水分が停滞し、むくみ(浮腫)が生じます 。
- 排尿への影響: 水分が下まで降りてこないため、尿の出が悪くなるという排尿障害も引き起こされます 。
4. 奇恒の腑と女子胞(参考知識)
六腑とは別に奇恒の腑という概念があり、その一つである女子胞(じしほう:子宮)は、胞宮(ほうきゅう)とも呼ばれます 。
- 経脈との関連: 女子胞は、奇経である衝脈(しょうみゃく)と任脈(にんみゃく)と強く関わっています 。
- 衝脈は十二経脈を流れる経血が集合するため、「血海(けっかい)」とも呼ばれます 。
- 任脈は陰経を統括します 。
- 月経と妊娠: 衝脈の働きが良く血海が充満し、任脈の働きで陰血がスムーズに胞宮に注がれると、月経がおこります 。妊娠中、胎児は衝脈と任脈によって栄養が補給されるとされます 。
六腑の機能は、生命を維持するための消化、吸収、そして不要物の排泄という一連の流れを支えています。六腑の変調は、この「伝導」の流れに滞りや異常な加熱・冷却を引き起こし、全身的な不調につながります。





















