「血」の役割と「心」・「肝」の密接な連携
東洋医学における「血」は、西洋医学でいう血液と似ていますが、単に栄養を運ぶだけでなく、より深い生命活動に関わる概念です。血の働きには「心」と「肝」という2つの臓腑が深く関わっています。
- 心(しん)の「推動(すいどう)」: 心は、血を全身に巡らせるポンプのような役割を担っています。この働きを「血の推動」と呼び、心臓が絶え間なく鼓動することで、血が身体の隅々まで届けられます。心の中にある血は特に「心血」と呼ばれます。
- 肝(かん)の「蔵血(ぞうけつ)」: 肝は、血を貯蔵し、必要な時に必要なだけ各部位に配分する機能を持っています。この機能は「蔵血」と呼ばれ、血を貯蔵する働きと、血流の量を調節する働きという、2つの重要な役割があります。
- 血流調節: 運動量に応じて、各部位がどのくらいの栄養を必要としているかを判断し、血の量を適切に調整します。例えば、運動時には筋肉に多くの血が送られるように血流を増やし、安静時にはその血を肝に貯蔵するといった働きをしています。
- 機能不全の影響: 蔵血機能が不十分だと、血が溢れて出血しやすくなります。また、血が不足すると、身体の各部位が栄養不足に陥り、さまざまな症状が現れます。特に肝は目や靭帯、腱、筋膜と密接に関係しているため、肝血が不足すると視力低下や目の疲れ、手足のしびれ、筋肉の震えなどが起こりやすくなります。肝の中にある血は「肝血」と呼ばれます。
さらに、「気は血の帥(すい)」という言葉が示すように、「気」が「血」の生成、循環、漏れを防ぐ働きを助けています。このことから、東洋医学では「気」「血」が互いに影響し合い、生命活動を支えていると考えられます。
「津液」の役割と「肺」・「脾」の連携
「津液(しんえき)」は、食べ物や飲み物から生成される、身体を潤す水分全般を指します。津液の循環には「脾」と「肺」が重要な役割を担っています。
- 脾(ひ)の働き: 食べ物や飲み物は胃で消化された後、脾が水分を吸収し、津液を生成します。
- 肺(はい)の働き: 脾で生成された津液は、肺の働きによって全身に運ばれます。肺は全身の水分循環を調整し、津液を身体の上方向や下方向に動かす役割を担っています。この働きにより、身体の組織が乾燥しないように潤されます。
- 「津」と「液」: 津液は、サラサラした水分の「津」と、ねっとりした水分の「液」に分けられます。
- 液の役割: 液は関節や骨の中心にある髄(ずい)、脳に溜まります。関節を滑らかに動かしたり、脳に栄養を供給したり、外部の刺激から脳を守る働きがあります。
不要になった水分は尿や汗として排泄されます。また、体表面に出た津液は「五液」と呼ばれ、汗、涙、鼻水、よだれ、唾液を指します。これらの五液は五臓(心、肺、肝、脾、腎)とそれぞれ関連づけられます。
- 五液と五臓の関係: 汗は心の液、鼻水は肺の液、涙は肝の液、よだれは脾の液、唾液は腎の液とされ、それぞれの臓器で生成された津液が体外に出ていくと考えられています。
このように、東洋医学の「血」と「津液」は、それぞれ異なる臓腑と連携しながら、身体のバランスを保つ上で不可欠な役割を果たしています。この相互作用を理解することは、健康維持や病気の予防を考える上で非常に重要です。





















