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5 痛みの解析と分類

診断の基本である「問診」においては、痛みの部位、性質、そしてその背景にある「実」と「虚」を見極めることが、適切な治療方針(辨証論治)を立てる上で不可欠です


1. 痛みの根本分類:実証と虚証

東洋医学では、痛みの発生機序を大きく「実証」と「虚証」の二元論で体系化しています 。

  • 実証の痛み(不通則痛): 風・湿・熱などの外邪の侵入や、血の流れが滞る「瘀血」、気の流れが停滞する「気滞」などによって、経絡の巡りが阻害されることで生じます 。これは「通ぜざれば則ち痛む(不通則痛)」という原則に基づいています。
  • 虚証の痛み(不栄則痛): 体力の低下に伴い、気・血・津液・精といった生命活動に必要なエネルギーや栄養分が不足した状態です 。組織が十分に養われないために生じる痛みであり、「栄えざれば則ち痛む(不栄則痛)」と表現されます 。

2. 痛みの性質による原因の推測

痛みの感じ方は、その原因となっている病邪や病態を雄弁に物語ります 。臨床的には、以下の10種類などの分類が用いられます 。

名称痛み方痛みの多い部位痛みの原因(主なもの)
脹痛張った感じ、膨満感をともなう腹部では気滞(気の停滞)、頭部では肝の熱の上昇
重痛重く感じられる痛み四肢、腰湿邪が気と血の動きを阻害
酸痛だるい痛み腰、膝虚証。湿邪が気と血の動きを阻害
刺 痛きりを刺したような痛さ脇、小腹、少腹、胃療血(血の停滞)
絞痛絞られるような痛さ胸、腹、腰疹血や結石などが気の動きを阻害
摯痛ひつぱられるような痛さ四肢肝が変調して筋に影響
冷痛冷たさをともなう頭、腰、胃寒邪の侵入や陽気が足りないため気と血がよく動かない
灼痛熱さをともなう脇、胃火邪の侵入や陰液が足りずに陽気が強くなつた
隠痛我慢できる慢性の鈍痛頭、胃、腹、腰気や血の不足
空痛痛い部分に空虚感をともなう気・血・精の不足

3. 部位別の病態解釈

痛みが生じている部位は、特定の「臓腑」や「経絡」と密接に関連しています

  • 頭痛: 外邪の侵入や陽気の過剰(実)、あるいは精気の不足(虚)により生じます 。痛む場所によって影響を受けている経脈が異なり、後頭部は「太陽経」、額は「陽明経」、側頭部は「少陽経」、頂部は「厥陰経」と判断します
  • 腹部: 腹部はさらに細分化して診断します。
    • 大腹(へそより上): 脾・胃の変調
    • 少腹(脇腹に近い両側): 肝の変調
    • 小腹(へそより下): 腎・膀胱・大腸・小腸・子宮の変調
  • 腰痛: 「腰は腎の府」と言われるように、慢性的な虚証の多くは「腎精の不足」に起因しますが、急性の場合は邪気の侵入による実証も考えられます
  • 四肢痛: 肘や膝を中心に痛む場合、実証では関節や筋肉への邪気侵入、虚証では脾胃の機能低下による栄養不足が疑われます

まとめ

東洋医学における痛みの分析は、単なる対症療法(鎮痛)に留まりません。患者が訴える痛みの性質や部位を精査することで、生体内のどのエネルギーが不足し、あるいは何が滞っているのかという「根本原因」を突き止めるプロセスなのです

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