黄帝尋ねて曰く「昔の人は百歳を超えても衰えることはないと聞くが、なぜ今時の人は五十歳ほどで皆衰えてしまうのか?」
岐伯答えて曰く「今時の人は酒を果汁のように飲み、過労を重ね、酔っては女を求め、一時の快楽のために、生きることの真の楽しみをすり減らす。だから五十歳になると衰えてしまうのだ。」
これは黄帝内経(こうていだいけい)という東洋医学(中医学)の基礎となっている約2000年前に書かれた古典の一節で、王の黄帝と医者の岐伯が問答している場面です。
中医学の古典には、どうしたら病気を治せるかよりも、どういうことをしていたら病気になるかということが主に書いてあります。それを守って、身体を痛めないように養生をしていくことが、健康でいられる秘訣というわけなのです。
この魔法陣のようなものは、五行論の五臓というものを表したものです。なんだかワクワクしませんか?私は、これはいったいどういう意味があるんだろう、なんだか神秘的なものに触れているような気がして、好奇心を持ってのめり込んで行ったことを覚えています。
この五臓では、私たちの身体を内臓に着眼点を置いて、体の様々な仕組みや症状を「肝、心、脾、肺、腎」5つの系統に分けて考えます。
肝を痛めれば、朝起きた時、口が渇く。
心を痛めれば、汗が止まらない。
脾を痛めれば、口臭がする。
肺を痛めれば、肌がガサガサになる。
腎を痛めれば、冷え性になる。
「なるほど、気になっていたあの症状は、この臓器を痛めていたからなんだ。そしたら、その臓器を痛めることはこれこれだから、それらをやめれば、その症状は治るのか!」
といった具合に、自分自身の身体に応用して治していくことができます。
漢方薬を処方されるとき、また体を診るような占いなどに、なぜこのような診断になるのかということも、この五臓を詳しく見ていくことで紐解くことができるようになります。
これから五臓のひとつずつについてを、現代の生活環境に合わせた現代版黄帝内経を書いていきたいと思います。次回は、「肝」についてです!お楽しみに!
★豆知識★
一般的に東洋医学と言えば、中医学を指しますが、本来は、インド医学(アーユルヴェーダ)、チベット医学など、アジアで生まれた伝統医学を総称して東洋医学と呼びます。それらの考え方にはやはり共通する点が多く、その山を上り詰めたら、ほぼ同じ考え方に辿り着きます。人気のヨガも東洋医学のひとつです。ヨガ、占い(易経)、漢方薬など、人が東洋医学に出会う入り口は様々ですが、真髄は繋がると思うと興味深いですね。