はじめに
東洋医学(中医)で五臓のひとつに脾がありますが、それは臓器の脾臓のことでなく、食物の消化吸収機能を指します。関係する臓器でいえば、胃や小腸となります。ちなみに解剖学(西洋医学のイメージ)での脾臓は、血液のろ過や免疫の役割の臓器です。中医の脾は、たまたま同じ漢字を使っているだけで、指しているものは違うものです。ここでは脾のことを場面によってはわかりやすくするために、消化吸収機能とか胃腸などと呼んでいきます。
脾ってどんな役割?
どの臓器も大切なのですが、この脾(消化吸収機能、胃腸)は健康を保つという上では、優先順位が最も高いものとなります。肝臓や腎臓など他の臓器が良好な状態だとしても、脾が弱ってしまえば、肝臓や腎臓、他の臓器に栄養が回らず、体全体が弱っていきます。肝臓や腎臓、他の臓器が元気になっていくためには脾の栄養を全身に巡らせるという機能が欠かせないのです。
脾が弱ったらどうなるの?
感覚的なものとしては、全身に倦怠感が現れます。寝起きで、体が動かず、まだ眠っていたい感覚になります。食欲不振になったり、食べたら調子が悪くなるけども、なにか口にしたくなったりもします。夏バテの症状は胃腸を痛めたときの症状です。立っていると足がだるくなります。肩甲骨周りから、腕にかけて痛みが出るのも胃腸が弱っているサインです。
外からわかるものとしては、目の下にクマができたり、自然と口がぽかんと開いていたり、また口を開けておいたほうが楽に感じます。舌に苔ができ、白くなったり、黄色になったりします。口臭がするのも特徴です。体の内側が腐るようなイメージが適しています。
脾はどうしたら弱るのか。
それは明確です。
・甘いものを飲食すること
・冷たいものを飲食すること
・食事の量や回数が多くて食べ過ぎになること
一方よくするにはどうしたらいいか。
それは逆のことをすれば、よくなっていきます。
・甘いものを取らない。
・冷たいものを取らない。
・食事の回数や量を減らす。
胃腸を悪くしている人はすごく多いです。私も油断をし、欲求のままに飲食をすれば胃腸を痛めます。体は治すのには苦労しますが、壊れるときにはあっという間に壊れます。東洋医学で一番大事にされるのが脾であり、残されてきたノウハウが一番多いのも脾です。私もこの連載コラムを通して、食事についてばかり語っているのは、胃腸をよくすることが健康の根本だからなのです。
次回は脾について実践的な内容のお話をしていきます。