東洋医学において、「気」は生命活動を支える根源的なエネルギーであり、その機能は多岐にわたります。具体的には、身体を温める温煦(おんく)、血や津液を全身に巡らせる推動(すいどう)、病原体から身体を守る防御、臓器や体液が漏れ出ないように保つ固摂(こせつ)、そして代謝を司る気化の五つが挙げられます。これらの機能のいずれかに異常が生じた状態が「気病」であり、大きく分けて4つのパターンに分類されます。
気の不足:気虚(ききょ)と気陥(きかん)
まず、最も基本的な病態として、気が不足した状態があります。これは、気の量が単純に足りない気虚と、気が持ち上げる力を失った気陥に分けられます。
気虚(ききょ)
気が不足する原因はさまざまです。栄養が不十分で気の材料が不足したり、消化器系の機能が低下して気を生成できない場合が考えられます。また、長期にわたる下痢、慢性疾患、出産、老化、過労などによる気の過剰な消費も原因となります 。
気虚の症状は、気の五つの機能がうまく働かなくなることで現れます。
- 推動作用の低下:全身に気が巡らないため、倦怠感や無力感が強くなります 。また、血を動かす力が弱まることで、脈に力がない虚弱な脈となります 。
- 固摂作用の低下:気を引き留める力が弱まるため、何もしていないのに汗が出る自汗や、眠っている間に涎を垂らすといった症状が現れることがあります 。
- その他の症状:声に力がなくぼそぼそと話す懶言(らんげん)や、息切れも気虚の代表的な症状です 。
気陥(きかん)
気虚が進行し、臓器や体液を上に押し上げる力が失われた状態を
気陥といいます 。この状態になると、内臓が本来の位置から下垂し、
胃下垂などが引き起こされることがあります 。それに伴い、お腹の張り、頻尿、下痢、さらには
脱肛や子宮脱といった深刻な症状を呈することもあります 。
気の流れの異常:気滞(きたい)と気逆(きぎゃく)
次に、気の量が足りていても、その運行に問題が生じた状態について見ていきましょう。
気滞(きたい)
気が流れずに滞った状態を気滞と呼びます 。これは、気分がすぐれない憂鬱感によって、さらに気の流れが滞ることがあるとされています 。
主な症状は、脹痛(ちょうつう)、つまり「張って痛い」という特徴的な痛みです 。これは胃の不快感としてよく現れ、食べすぎたときの胃の張りが良い例です 。気滞による痛みは、痛む場所が移動したり、痛みが強くなったり弱くなったりするのが特徴です 。げっぷやおならによって症状が和らぐのも、この気滞の診断に役立つ重要なヒントとなります.
気逆(きぎゃく)
本来下に降りるべき気が、何らかの原因で上に突き上がった状態を気逆といいます 。特に、肺、肝、胃の三つの臓器で起こりやすいとされています 。
- 肺の気逆:気が上に突き上がると、咳や喘息などの呼吸器症状を引き起こします 。
- 肝の気逆:精神的なストレスと関連が深く、イライラ感や、それに伴う頭痛、めまいが現れ、重症の場合は昏倒することもあります 。
- 胃の気逆:気が上に動くため、嘔吐、悪心(おしん)、げっぷといった消化器系の症状を引き起こします 。
★その他の気病:気閉と気脱★
- 気閉:気を吐き出すことができない状態 。
- 気脱:生命を維持する「正気(せいき)」が尽きてしまった状態 。





















