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23 腎の変調と全身への影響

1. 腎の基本的な機能と重要性

東洋医学において、「腎(じん)」は単に西洋医学のKidneyが担う泌尿器系の役割に留まらず、生命活動の根源を司る極めて重要な臓器と位置づけられています 。腎には、主に以下の三つの主要な機能があるとされています

  1. 蔵精(ぞうせい): 精(せい)を貯蔵する機能
  2. 主水(しゅすい): 水分の代謝を調節する機能
  3. 納気(のうき): 呼吸によって取り込んだ清気を収める機能

また、腎は、体内の陰陽の根本(腎陰と腎陽)が宿る場所であり、全身の陰液の根源(真陰、全身を潤す)と陽気の根源(全身を温める)として、各臓の陰陽の基礎をなしています 。この性質から、腎は「水火の宅(すいかのたく)」とも呼ばれ、腎陰は「命門の水」、腎陽は「命門の火」に喩えられます


2. 蔵精機能の失調とその影響

「蔵精」とは、腎が「精(腎精)」を貯蔵することを指します 。この精は、生命を維持し、成長・発育、生殖、そして老化のプロセスを司る根源的な物質です

腎精不足による症状

腎の変調により蔵精機能が失調すると、「腎精(じんせい)」が不足します 。この不足は、生命のスタミナが足りなくなることと同義であり 、その症状はライフステージに応じて、全身にわたって現れます

  • 小児: 成長の遅れ
  • 成人: 性機能の減退
  • 高齢者・一般:
    • 老化の促進: 腎精の減少は老化現象として現れるため、急速な減少は老化を早めます
    • 運動器系の弱化: 足腰がだるくなり、転びやすくなる(特に高齢者) 。全身に力が入らなくなる
    • 髄(ずい)の生成不全と骨・歯への影響:
      • 精には髄を生じる作用があり 、髄は骨に入って栄養を与えています 。腎精不足により髄が減ると、骨がもろくなり、骨粗鬆症の原因の一つとも考えられます
      • 歯も腎精から栄養を受けるため、加齢に伴う歯の脱落も腎精不足と関連するとされます
    • 脳機能の低下(髄海):
      • 東洋医学では、髄は骨髄と脊髄に分けられ、脊髄は脳につながり、脳は髄が集まった「髄海(ずいかい)」とされます
      • 脊椎の中の髄が減ると、脳の働きが衰え、物忘れ認知症が起こるといわれます

3. 主水機能と納気機能の変調

3.1. 主水(水分の代謝調節)

腎は、全身から集まってきた水分を、必要なものと不要なものに分別し、不要な水分を膀胱に回して排泄させます

  • 主水の機能不全: 水分代謝に障害が出ると、排泄されるべき水分が体内に停滞し、むくみ(浮腫)となることが多いです
  • 排尿の制御: 膀胱が尿を出すタイミングは腎が決めているとされるため 、腎の変調は膀胱の機能不全を招き、尿が出なくなる、頻尿、失禁といった排尿障害を引き起こします

3.2. 納気(呼吸機能の補助)

「納気」とは、肺が大気から吸い込んだ清気(せいき)を、腎に収める(おさめる)ことを指します 。腎は、呼吸を通じて取り込んだ「気」を深く根付かせ、安定させる役割を担っています。

  • 納気の機能不全: 納気できなくなると、肺が吸入した気が腎に下がらなくなり 、肺への気の出入りに支障が出るため、息切れ呼吸困難といった呼吸器系の問題が現れます 。これは、新しい気を深く吸い込めない状態とも言えます

4. 腎と関連する器官・感情

腎の変調は、特定の感覚器、開口部、そして感情とも深く関連しています。

  • : 腎は耳と強く関わっているため 、腎が弱ると耳鳴り難聴(聞こえにくい)があらわれます
  • 外生殖器・肛門: 外生殖器と肛門も腎と強く関わっており 、腎が弱ると大小便の失禁につながります
  • 津液(しんえき)・唾(つば): 唾(つば)は、口を潤し、飲食物の嚥下を助け、腎精に栄養を与える大事な津液です 。腎の変調によって唾の量が変化し、唾が減って口が渇く、あるいは逆に唾が多すぎるといった症状が現れます
  • 感情(恐): 恐怖の感情は腎と深く関わるとされ 、強い恐怖は腎を痛めます
    • 「怖くて尿を漏らす」のは、強い恐怖が腎を弱らせ、排尿を閉じる機能が失調するためと考えられています
    • 恐怖を感じた後に白髪になったり、毛が抜けるのも、腎が痛めつけられた結果とされます

まとめ

腎の機能は、蔵精、主水、納気の三つの側面から、人体の成長、生殖、水分バランス、呼吸の深さ、そして老化の速度まで、生命活動のあらゆる側面に影響を及ぼしています。特に、生命の根源的なエネルギーである腎精の充実が、骨格の強さ、脳の機能、そして活力を保つ鍵となります。腎の変調は、身体的な衰えだけでなく、耳や唾液、そして感情(恐怖)といった多岐にわたる症状として現れるため、腎の養生は、東洋医学における健康維持の核心と言えるでしょう。

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