血液中には、コレステロール、リン脂質、トリグリセライド(中性脂肪)、遊離脂肪酸の4種の脂質があり、これらを血清脂質といいます。この血清脂質のいずれかの量が異常に高くなった状態が高脂血症です。また、4種の脂質のうち、コレステロールが多い状態を高コレステロール血症、トリグリセライド(基準範囲55~130mg/dl)が多い状態を、高トリグリセライド血症といいます。
血液中の脂質
コレステロールは、本来生命維持に必要な栄養素です。その主な役割は、からだを形成する細胞膜の材料として必須の物質であると同時に副腎皮質ホルモン・性ホルモンなどの合成の材料にもなっています。さらに、食事として摂取した脂肪の消化や吸収に必要な胆汁酸の材料です。また、光線療法と密接な関係にあるビタミンDも皮下に存在する7-デヒドロコレステロールというコレステロールの一種から産生されます。血液中のコレステロールは、LDLコレステロール(基準範囲:80~139mg/dl)とHDLコレステロール(基準範囲:36~62mg/dl)の2種類があり、これを合わせたものを総コレステロール(基準範囲:130~250mg/dl)といいます。LDL(低比重リポたんぱく)の量が多いと、動脈壁やいろいろな臓器に蓄積し、障害を起こします。このためにLDLコレステロールを悪玉コレステロールと呼びます。HDL(高比重リポたんぱく)は、全身の組織から余分のコレステロールを取り除く働きをします。したがって、HDLコレステロールは善玉コレステロールと呼ばれます。中性脂肪は、皮下脂肪として存在し、一部は心臓、腎臓などの周囲や肝臓、筋肉にも存在します。中性脂肪の役割は、糖分とともにからだに必要な大切なエネルギー源です。糖分が少なくなると中性脂肪を燃焼させてエネルギーを産生します。また、皮下の中性脂肪は熱の発散を防ぐ断熱作用があります。さらに、心臓や腎臓など内臓の周囲にある中性脂肪は、からだを動かすことによる振動から各臓器を保護するクッションとしての役割もあります。しかし、総コレステロール、LDLコレステロール、中性脂肪などが高い、あるいはHDLコレステロールが低いと動脈硬化(動脈の内膜に起こる粥状硬化)を促進することになります。
高脂血症の合併症
高脂血症は自覚症状がありません。そのため放置しがちですが長年放置すると合併症を起こしてきます。
(1)高コレステロール血症の合併症
長年放置すると、動脈硬化症を発症して、脳梗塞、心筋梗塞、閉塞性動脈硬化症などの合併症を起こします。また、胆石症を合併する頻度も高くなります。
(2)高トリグリセライド血症の合併症
高トリグリセライド血症が続くと、肝臓に脂肪がたまる脂肪肝を誘発し、進展すると膵炎も起こります。
(3)家族性高コレステロール血症
高コレステロール血症になりやすい体質が遺伝して起こったものを家族性高コレステロール血症といいます。家族性高コレステロール血症が高度になると、黄色腫という扁平なふくらみが、まぶた、手の甲、肘などに発生します。
高脂血症の原因と治療
肉類、脂肪の多い魚、バター、ベーコンなどの動物性脂肪や卵、ウニ、イクラ、レバーなどコレステロールを多く含む食品の過剰摂取が原因になります。また、カロリーの取り過ぎ、運動不足、中年肥り、糖尿病なども原因になります。治療法としては、生活習慣の改善、運動療法、食事療法、薬物療法などがあり、精神的・肉体的ストレスを避けるようにすることも大切です。毎日7000~1万歩を汗ばむ程度の速さで歩くなど、適度な運動を心がけることが必要です。食事では、動物性脂肪を取り過ぎないように注意します。トリグリセライド値が高いのは、多くは食べ過ぎが原因です。脂肪の量全体を少なめにし、砂糖、甘いもの、アルコールなどもできるだけ少なくする必要があります。
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