1. 経絡の構造的二面性:経脈と絡脈
経絡という言葉は、その役割と走行方向によって大きく二つの系統に分類されます 。
- 経脈(けいみゃく): 系統の「主幹」にあたる太い枝です 。主に身体の縦方向にのびており、深部を走行して臓腑と直接的なつながりを持ちます 。
- 絡脈(らくみゃく): 経脈から細かく分かれた「分枝」です 。身体の横方向や斜め方向へと網の目のようにはりめぐらされ、経脈同士や組織、皮膚をつなぐ役割を担っています 。
さらに細分化すると、経脈には十二経脈や奇経八脈などが含まれ、絡脈には十五絡脈や、より浅層を走る浮絡、孫絡といった微細なネットワークが存在します 。語源を紐解けば、「経(けい)」には「まっすぐな道(径)」、「絡(らく)」には「網」という意味があり、これらが一体となって全身を網羅しているのです 。

2. 生理的機能:生命維持と防御システム
経絡の主要な機能は、気・血を運び、各組織を正常に機能させること」です 。すべての組織や器官は、経絡を通じて気血が十分に供給されることで初めてその役割を果たすことができます 。もし経絡が滞れば、直ちに身体機能に悪影響が及びます 。
また、経絡は外部からの疾病因子である「外邪(がいじゃ)」から身体を守る防御の役割も果たしています 。
- 防御の仕組み: 外邪が皮膚に付着すると、防衛の気である「衛気(えき)」が絡脈に集結し、体表面のバリアを強化して侵入を阻みます 。
- 病理的な進展: 万が一この防御を突破されると、外邪は「絡→経→腑→臓」という順序で、体表面から身体の深部へと進行していきます 。
3. 臨床的応用:経絡診断法と治療のメカニズム
経絡は、身体の内部(臓腑)と外部(皮膚・ツボ)をつなぐインターフェースとして機能します。
■ 経絡診断法
内部にある臓腑の異常は、経絡を通じて体表面の特定の部位や「ツボ(経穴)」に症状として現れます 。
- 例: 「肝」に不調がある場合、その経絡が通る脇の下や下腹部が痛んだり、目に異常が出たりすることがあります 。 医師は皮膚の状態やツボを観察し、あるいは指でこすって違和感を確認することで、目に見えない臓腑の変調を推測します。これを経絡診断法と呼びます 。
■ 鍼灸治療と遠隔治療
治療においても、この連絡網が活用されます。鍼や灸で体表面のツボを刺激すると、その刺激は経絡を伝わって内臓へと届きます 。
- 刺激の伝導: ツボを刺激することで気血の巡りを導き、臓腑の機能を調整します 。これにより「正気(せいき)」が強まり、陰陽のバランスが整って症状が改善します 。
- 遠隔治療の理論: 経絡の走行(コース)を把握していれば、例えば「足のツボを刺激して胃の病気を治す」といった、患部から離れた場所からのアプローチが可能になります 。
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