東洋医学における腎は、生命活動の根源や生長・発育・生殖を司る最も重要な臓腑の一つとされています。その機能は、人体の精を貯蔵する蔵精、水分の代謝を調整する主水、呼吸を安定させる納気の三つが中心です 。これらの機能の変調は、老化現象、水分代謝異常、呼吸困難、さらには恐怖の感情とも深く結びついています 。
1. 蔵精機能の失調:腎精の不足と老化現象
蔵精とは、腎が生命力の源である精を貯蔵する機能です 。腎の変調により蔵精機能が失調すると、腎精(腎の精)が不足する状態(腎精不足)に陥ります 。
腎精不足がもたらす影響
腎精の減少は老化現象として現れ、急速に減ると老化も早く進むと考えられています 。
- 成長・発育: 子どもでは成長の遅れとして現れます 。
- 生殖機能: 成人では性機能の減退が見られます 。
- 全身の衰え: 物忘れが増え、足腰がだるくなり、ころびやすくなるとされます 。全身に力が入らなくなることが多いのは、命のスタミナとされる腎精が足りなくなるためです 。
髄との深い関係
精には髄(骨髄と脊髄)を生じる作用があるため、腎精が足りないと髄が減少し、身体の土台に影響が出ます 。
- 骨と歯: 髄は骨に入り栄養を与えているため、腎精不足は骨をもろくし、骨粗鬆症の原因とも考えられます 。歯も腎精から栄養を受けているため、歯が抜けるのも腎精不足が原因とされます 。
- 脳と認知機能: 脊椎の中の髄は脳につながり、脳は髄が集まった部分(髄海)であるため 、髄が減ると脳の働きが衰え、認知症や物忘れがおこるといわれます 。
2. 主水機能の失調:水分の代謝異常と排尿障害
主水は、全身の水分の代謝を調節する機能です 。腎は全身から集まった水分を、必要なものと不要なものに分別し、不要な水分は膀胱に回して排泄させます 。
- むくみ: 主水が正常に機能しないと、排泄されるべき水分が体内で停滞し、むくみとなることが多いです 。
- 排尿の異常: 腎は膀胱が尿を出すタイミングを決めているとされるため 、腎が変調すると膀胱の働きが乱れ、尿が出なくなったり 、逆に頻尿や失禁したりします 。腎が弱ると、大小便を失禁するようにまでなるともいわれます 。
3. 納気機能の失調:呼吸の乱れ
納気は、肺が大気から吸い込んだ清気を、腎にしっかりおさめる(深く取り込む)機能です 。
- 呼吸困難: 納気できなくなると、肺が吸入した気が腎に下がらず、肺への気の出入りに支障が出ます 。その結果、息切れや呼吸困難といった症状が生じます 。
4. 腎と身体の開竅、情動の関係
腎は、耳と外生殖器、肛門などと強くかかわっているとされます 。
- 耳の症状: 腎が弱ると、耳鳴りや難聴があらわれます 。
- 津液(つば): つばは口をうるおし、食べ物を飲み込むのを助け、腎精に栄養を与える大切な津液です 。腎の変調でつばの量が変化することがあります(減少して口が乾く、あるいは多すぎる) 。
また、腎は恐怖の感情と深く関わるとされ、強い恐怖を感じると腎を痛めます 。
- 恐怖と失禁: 「あまりにこわくて尿を漏らす」のは、強い恐怖が腎を弱らせ、排尿をコントロールする機能が失調してしまうためと考えられます 。
- 毛髪への影響: 恐怖を感じて白髪になったり、毛が抜けるのも、腎が痛めつけられた結果とされます 。





















